「悲しみの果てに 伝説再び」

ソミュールのクロ ルジャール、プィイフュメのディディエ ダグノーと並んで、ロワールで最も著名な生産者であるドメーヌ ヴァシュロン。サンセールの歴史と共に歩んできたとも言えるこのドメーヌは、伝統的なワイン造りにおいて「巨匠」と呼ばれるに相応しいプライドと実力を持った生産者です。ヴァシュロン家は、サンセールが片田舎の小さな町のひとつであった頃に少量のブドウ栽培を始め、以来4代にわたって家族経営でドメーヌを継承してきました。2代目にあたるジャン ヴァシュロンは、それまで主だった穀物の栽培からピノノワールの栽培へと切り替え、本格的にワイン造りに乗り出しました。この瞬間より、サンセールにおけるピノノワール繁栄の歴史が始まったと言えます。

ドメーヌがワイナリーとして確固たる地位を築いたのは、3代目にあたるドニ ヴァシュロン、ジャン ルイ ヴァシュロン兄弟の時代です。二人は共同してドメーヌの運営に当たり、サンセールのトップドメーヌとしての地位を確立しました。特に、ピノノワールから生まれるサンセールルージュは、このアペラシオンで最上位の生産量を誇る、ドメーヌの看板ワインです。父が植えたピノノワールが、彼らの代になって花開き、ヴァシュロン家は名声を得ます。

現在ドメーヌは、ドニ、ジャン ルイそれぞれの息子であるジャン ローランとジャン ドミニクの二人で運営されています。ジャン ローランは、DRCのオーナーであるオーベル ド ヴィレーヌが、カリフォルニアで所有するワイナリーをはじめ世界中のワイナリーで研鑽を積み、2002年よりドメーヌ ヴァシュロンでワイン造りに参加しました。一方のジャン ドミニクはシャトー ヌフ デュ パプで働いた後、1993年にドメーヌに戻り働き始めます。二人は、ワインに繊細さをもたらし、美しいテロワールを表現するためには、畑においてより自然な方法で栽培を行うことが重要だと考えました。そして、数年にわたり除草剤や化学肥料を用いないビオロジックを実践し、2003年以降はビオディナミの手法を採用した栽培に切り替えます。

「テロワールを真に表現するには、ビオディナミなくしてはならない。未来のグラン クリュは、自然を極限まで尊重した栽培なくしては生まれない。その時代は、もうそこまで来ている。」

そう語るジャン ドミニク。
若い彼らの感性が、ドメーヌ ヴァシュロンのワインをよりいっそう磨き上げます。

「私達の父達が、自分の力と努力、知識でこのドメーヌの全てを作ってきました。そして私達はその努力を無駄にしないように、そしてその歴史を誇れるように頑張らなくてはならないのです。その思いが我々の力となり、モチベーションとなっているのです。」

「畑というものを甘く見てはいけません。些細な事でも容赦しないし、毎回決闘を挑まれているようなものです。ですから、どんな状況を目の前にしても謙虚さを保ち、ブドウの木が何を必要としているのかに耳を傾けてあげないと、美味しいブドウは生まれないと考えています。」

強い信念とゆるぎない意志を持ってワイン造りに当たるドメーヌ ヴァシュロンですが、家族一丸となって素晴らしいワインを生み出している背景には、ある悲しい出来事があります。ヴァシュロン家には、ジャン ローランとジャン ドミニク、他にもう一人の息子がいました。「天才」と呼ばれたジャン ドニ ヴァシュロンその人です。ジャン ドニはワイン造りに卓越した才能を発揮し、妻の実家であったシャトー ヌフ デュ パプのドメーヌを名実ともにトップへと押し上げました。「ル クロ デュ カイユ」の名で知られるこのドメーヌは、多くの賞賛を浴びるスタードメーヌへと登り詰め、まさにその絶頂で大きな不幸に見舞われます。2002年3月、当主のジャン ドニは交通事故で他界しました。家族を失った悲しみは、ヴァシュロン家を大きく成長させます。ワインに向き合い、畑での仕事を大切にする。この事を通して、より繊細で、より美しいワインを目指しました。悲しみを乗り越え、素晴らしいワインを生み出すことが、残された彼らにとって唯一の弔いとなったのです。

ドメーヌ ヴァシュロンでは現在、11haに及ぶピノノワールの畑と32haに及ぶソーヴィニヨンブランの畑を所有しています。サンセールの土壌は、粘土と石灰岩の層の上に広がるシレックス(火打ち石)が豊富で、ミネラル感、花の芳香、フールツの風味が豊かなバランスの良いワインとなります。なかでもドメーヌ ヴァシュロンの所有する畑は、石灰とシレックス(火打ち石)の割合がほぼ同じというこの地域では珍しい土壌となっており、石灰岩はバランスの取れた酸を与え、シレックス(火打ち石)はミネラルと繊細な香りをワインにもたらします。

「畑では、摘芽や摘果を丁寧に行い、収穫量をできる限り低く抑える努力をしています。サンセールでは、70hl/haまでの収穫量が認められていますが、私たちは50hl/haほどしか収穫していません。栽培においては化学的な物質を用いませんし、肥料も堆肥のみを使用しています。病虫害の予防には、イラクサやその他の植物を用いた自然な調剤を使用し、これによって土をより健康な状態に保ちます。結果的にテロワールの特徴を損なうことなく、バランスを保つことができます。収穫に際してはすべて手作業で行い、畑や醸造所で厳しい選果を行います。テロワール由来の風味を引き出すには完璧に熟したブドウを収穫することが第一条件なのです。

Sancerre Blanc - サンセール ブラン -
品種: ソーヴィニヨンブラン 100%

平均樹齢25年のソーヴィニヨンブラン100%、ステンレスタンクにて発酵させ、熟成にもステンレスタンク(一部トロンコニックタンク = 木製の大型桶)を使用。澱と共にシュールリー状態で熟成させます。 石灰質のテロワールがリッチ感を、シレックス(火打ち石)のテロワールが繊細さをワインに与えています。真っ直ぐでまろやかな風味、ミネラル感溢れる洗練された酒質、熟したブドウの美しい酸味が味わえます。柑橘類のフルーツと、白い花の香りが特徴的です。

Sancerre Blanc Les Romains - サンセール ブラン レ ロマン -
品種: ソーヴィニヨンブラン 100%

収穫量僅か30hl/haのソーヴィニヨンブラン100%。シレックス(火打ち石)主体の土壌で、硬質で厚みのあるミネラルと透明感のある風味がバランスのよいワインです。ステンレスタンクでの発酵後、熟成にはステンレスタンクと木樽を使用。澱と共にシュールリー状態で1年半ほど熟成させます。厚みのある果実味としっかりとしたミネラルが、ワインに複雑味を持たしており長い余韻が楽しめます。

Sancerre Rouge - サンセール ルージュ -
品種: ピノノワール 100%

平均樹齢30年のピノノワール100%、ステンレスタンクにて発酵させ、熟成は木樽とトロンコニックタンク (木製の大型桶)を使用し1年間ほど熟成させます。ひきしまったタンニンとシレックス(火打ち石)土壌由来の繊細さが特徴の端正な味わい。赤系果実の風味豊かなエレガントなワイン。

Sancerre Rouge Belle Dame - サンセール ルージュ ベル ダム-
品種: ピノノワール 100%

収穫量僅か30hl/haのピノノワール100%。ステンレスタンクでの発酵後、新樽40%に加え1年樽とトロンコニックタンク (木製の大型桶)を使用し1年間ほど熟成させます。風味には、サクランボやカシス、ブラックベリーのアロマが感じられ、複雑さとボリューム感をワインに与えています。爽快なフレッシュさとしっかりとしたタンニンのバランスはまsない完璧で、ピノノワールの美しさを如何なく表現しています。