「アフリカの熱風が造る甘口ワイン」

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地中海に浮かぶ孤島、「パンテッレリア」。シチリアとアフリカ大陸(チュニジア)のほぼ中間に位置する周囲45キロの火山島で、日本でいえば八丈島のような、独特の景観を持った島です。この島はマルサラ(シチリア)のマルコ ディ バルトリが所有する「ブックラム」という農園でつくられる、あまりにも美味しいジビッボ種のデザートワインで有名なため、イタリアワインの愛好家からは、一度は訪れてみたい夢の島と呼ばれています。しかしこの島に住む人々にとって、自然条件はあまりにも厳しく、アフリカから吹きつける強烈な熱風とともに、オレンジ色の砂が運ばれてくるため、ダンムーゾと呼ばれるアラブ式の白い住居には毎日砂が積もり、激しい天候の変化のために電気や水道などのライフラインがストップすることも珍しくありません。この島で栽培される主な作物は、ブドウとオリーブとケイパーです。しかしどれも強風のために樹は地を這うように低く伸び、オリーブは樹齢が100年近くであっても2メートルほどの高さしかなく、樹の下に潜りこんで収穫しています。ケイパーは実が大きくて、噛むととてもジューシー、よくスモークサーモンについている物は酢漬けですが、この島では塩漬けにして保存しています。

そのパンテッレリアで、昔ながらの伝統を守りながらジビッボ(モスカート ダレッサンドリアのアラブ名)をパッシート(陰干し)した甘口ワインを造っているのが、サルヴァトーレ フェッランデス氏です。彼の2haほどの畑は、海辺から標高400mほどの山の中腹まで7か所に分かれており、それぞれの土壌の特質が異なるうえにブドウが熟すスピードも違うため、発酵中にも新たに収穫したブドウを継ぎ足しながらとても長い発酵が行われ、これによって酸化したニュアンスとフレッシュな果実が同居したような、フェッランデス独特の風味が生まれます。またフェッランデスでは、ブドウのパッシートは陰干しではなく、灼熱の太陽のもとでシートを広げて天日干しにて行われ、極甘口でありながらも、喉を過ぎるとフワッと消えて身体の中に旨みが広がるような感覚が得られます。

ブドウの栽培においては、この島独特の仕立て方が存在します。アルベレッロ(株仕立て)の樹のまわりに、「コンカ」というアリ地獄のような穴を掘るのです。吹きつける強風から樹を守るために行われている栽培法なのですが、砂漠のように水分が少ないこの島では、葉が茂ると穴をふさぐような形になることで、その中に温度や湿度を貯め込む効果があり、根からブドウの実までの距離も近いため、これもブドウの成熟に大きな役割を果たしています。しかしブドウ栽培農家にとっては、このコンカの手入れをすること自体も、大変な労力を必要とする作業です。

近頃はシチリア島のワインメーカー数社が、この島に進出を果たしており、島の行政も大企業の保護を優先させる傾向があるため、フェッランデスのような島の伝統を守る小さな農家がワインづくりを続けることが、困難な状況となっています。生活をするだけでも大変なこの島で、昔ながらのワインづくりを守り続けているサルヴァトーレには、心優しく素朴な人柄の彼ならではの「島のワイン」を、作り続けてほしいと願ってやみません。

 

Passito di Pantelleria - パッシート ディ パンテレッリア -
品種: ジビッボ(モスカート ダレッサンドリア) 100%

濃密な褐色とアールグレーのような芳香を備えた甘口ワイン。いわゆるデザートワインのフルーティーでベトっとした甘さという味わいではなく、旨みとコクと骨格のある強靭な芯を感じさせる甘口ワインです。十分な糖度を感じる一方で、どこかドライな印象もあり、時間の経過とともに紅茶を思わせる香ばしい香りがどんどんと成長して行きます。酸化的なニュアンスとフレッシュなニュアンスが渾然一体となった他に類を見ないタイプのワインですが、深い魅力をもった唯一無二なデザートワインです。

このワインは、タルトのような焼き菓子と一緒に飲むとワインの味わいはより濃密に、焼き菓子はより軽やかに感じられ、フレッシュの果物と一緒に飲むとワインはより爽やかに感じられるようになります。抜栓後も味わいは変化しつつ相当な期間(1ヶ月以上)楽しむことが可能なのもこのワインの魅力と言えます。